先日、幼稚園のお友だちのお母さんたちとお話しする機会があり、その中のお一人が
夫から言葉の暴力を受けている
というお話をされました。
明るくて、よくしゃべるお母さんで、以前にも、「もう、うち離婚しようかな。」などと冗談まじりに話していたことがあります。
ですが、今回聞いた話では、もっと深刻な様子でした。
そのお母さんは、すでにDV相談窓口に相談されていて、支援も受けているそうです。
そのとき話を聞いた私たちも、応援していくつもりです。
私は、以前DV関連の勉強会に出たことがあり、そのお母さんにも、そのときの資料をまとめたものを渡そうと思っているので、こちらでも共有したいと思います。
勉強会でもらった資料とその時の自分のメモなどから書いています。
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは
配偶者やパートナー、恋人間など、親密な関係にある男女間における暴力。
身体的な暴力だけでなく、精神的、社会的、性的、経済的、子どもを利用した暴力がある。
DVは、けんかなどではなく、支配関係がある状態。
話し合って物事を決めることができない関係、相手の顔色を見て従属する関係になっている。
最初は自分で選んで始めた関係であることから、親や親しい人にも相談できないことが多い。
当事者にとって、支配関係が日常になってしまっているので、外から見て「なんでそこから逃げないの」ということが分からなくなっている。
自分でも支配構造だと気付きにくいという特徴がある。
DVの具体的な態様と被害者に与える影響
身体的に危害を加える暴力
態様:殴る、蹴る、刃物で傷つける など
被害者への影響:けがをする、命を奪われる、恐怖心を与えられる
精神的な暴力
態様:大声で怒鳴る、脅す、物を壊す、馬鹿にする、罵倒する など
被害者への影響:相手の価値観を受け入れないと生き抜いていけないことから、自己肯定感が低下する、自信を失う、罪悪感を抱く、混乱する、心が壊れる
性的な暴力
態様:望まない性交渉、避妊をしない、裸の写真を撮る、結婚前の性経験を話させる など
被害者への影響:強い「恥」の意識を持つ、自尊感情が低下する、人に相談できず孤立する
社会活動を制限する暴力
態様:外出させない、監視する、行動を指示する、仕事をさせない
被害者への影響:自由な行動ができない、社会から孤立する、人間関係が築けない、経済力が持てない
経済的暴力
態様:生活費を渡さない、買い物をチェックする、家計簿を細かくつけさせ逐一チェックする、年金保険料を払ってくれない
被害者への影響:経済力が持てない、相手に依存するしかなくなる、自由に行動できない、日々、力関係を確認させられる
子どもを利用した暴力
態様:子供を虐待する、子どもに女性を非難させる、子どもの目の前でおとしめる
被害者への影響:従属を強いられる、孤立させられる
DVと子ども
子どもへのDV
・直接的なDV、虐待
DVが起きている家庭の多くでは、子どもも暴力の直接の対象になっている。
(身体的な暴力、怒鳴られる、罵倒される、行動を制限されるなど。)
・間接的なDV、面前DV
暴力を目撃したり、物音や声を聞いたり、被害者がけがをしたり家の中が荒れた様子を見ることで、心理的な被害を受ける。
加害者が子どもに対し、被害者に暴力をふるったり、罵倒したりするよう強要することもある。
DVが子どもに与える影響
・一方が他方を支配する関係を学ぶ
・物事の解決方法として、暴力を選ぶことを学ぶ
・暴力の中で、不安や恐怖心を抱えているため、自分の感情や意思を抑え込み、子どもとしての発達、成長が阻まれていることが多い
(生き生きとした感情表現が乏しい、「聞き分けがよい子」としてふるまう、親やほかの兄弟に暴力をふるう、学校や園でほかの子どもに暴力をふるう、不登校や引きこもり、抑うつ、摂食障害、万引きや売春行為)
DV加害者の特徴
・問題飲酒、薬物依存、暴力的な性格が原因であることは少ない
年齢、学歴、職業、社会的地位とは関係なく、「普通の人」がほとんど
(職業は、公務員、教師、会社員、医師、自衛隊員、お坊さんなど様々。)
・パートナーに対する執着心が強い
・「家族の中ではお父さんが一番えらい。尊重されるべき」というような価値観から、「パートナーは、自分の要求を受け入れ、従属すべきもの」という考えが強い
・自分の非を認めない、自己正当化し、相手に責任転嫁する、自分に向かって対等にものを言ってくることが間違っていると思っている
・暴力を容認する考えを持っている
・パートナーに味方する者(親族、友人、支援者、弁護士など)に対し、攻撃性を示すことがある
・ほとんどの場合、DVの加害者であることが分かっても、社会的立場や収入はほぼ変わらず、処罰を免れている
★DVは、被害者が引き起こしている問題ではない。
加害者が持つ「自分は相手を思いどおりに支配・管理しても許される」という価値観や考えによって起きている問題。
この加害者の価値観は、社会の構造によって支えられている
・男性優位、男性中心の社会の現状
・女性はサポート役、従属的な立場という考え方
・暴力を容認する意識
・女性が経済的自立ができにくい社会構造 など
DV被害者への支援
まずは、加害者との間に物理的な距離をとり、安全な生活を取り戻せるようにする
➡ 主に、警察、支援団体による支援
同居している場合の安全対策の知識の提供
逃げるタイミングと場所の選定、シェルターの提供、子どもの見守り、
裁判所による接近禁止命令の手続きの支援、
生活費、住居、子どもの転校等の行政手続きなど生活再建のための支援など
安全、安心な生活をしていく中で、本来の自分の生き方を見い出せるようにする
➡ 主に、支援団体、医療機関による支援
DVに関する正しい知識の提供、
医療機関への受診、カウンセラーなどによる心身の回復に向けた支援
孤立化の防止、社会とのつながりの回復
子どもに対しても、親のついでではなく、DV被害の当事者としての支援を行う
離婚、年金などの法的な手続きに対する支援
➡ 主に、弁護士などによる法的な支援
生活費や子どもと加害者の面会交流の問題への対処
自分がDVの相談を受けたときにできること
・被害者の言うことを信じる、気持ちを受け止める、そのことを伝える
「あなたが悪いのではない」
「DVは暴力であり、人権侵害です」
被害を軽視しない、無視しない
被害者の落ち度のような言い方をしない
被害者に「話し合えば何とかなるのでは」と言うことも、二次被害になりえる
・DVの相談窓口に関する情報を提供する
本人の了解を得た上で、相談窓口に連絡する
被害者が希望するなら、相談窓口に行くときに同行する
・危険がないよう気をつけた上で、被害の状況を書き留めたり、記録したりすることをすすめる
まとめ
話をしてくれたお母さんは、「相手の話を聞いていると、だんだん、自分がおかしいのかな、相手の言っていることが正しいのかな、と分からなくなってくる。」と言っていました。
また、「自分が我慢すればいいのならするけど、子どもに対しても、ひどいことを言うようになってきているし、エスカレートしてきているのが怖い。」と言っていました。
DVは、外から気づきにくい犯罪です。
DVでけがをしても、被害者が病院に行かなかったり、病院に行っても、暴力を受けたとは言わないことが多いそうです。
また、家の中で行われる言葉の暴力などは、外からは非常に気づきにくいことや、「家族は仲良く、家族の絆が大事」という社会の規範から、被害者が言い出せないということがあります。
だからこそ、最低でも、被害者が被害を打ち明けてくれたとき、受け止めて、支援につなげられるようにしたいですね。
お読みいただきありがとうございました。