娘はHSC~親ができそうなことをやってみた~

長女はほぼ間違いなくHSC(とても敏感な子)。次女もおそらく。夫と私はHSPです。うちでの試行錯誤を書いていこうと思います。

【インタビュー記事】公立中学校の先生にお話を聞きました

こんにちは。

昨年度、小3の長女が学校に行きにくくなって、学校に関する話題が気になっています。

子どもたちの不登校が過去最高になっていて、一方、先生たちも精神疾患による休職がも過去最高とか。

学校が生徒にとっても先生にとっても、毎日普通に通えないくらいしんどい場所になっているということですよね。

何が学校をそんな大変な場所にしているのか。

そういう疑問が大きくなりました。

 

特に、読み聞かせボランティアや行事の付き添いで学校に時々顔を出すようになって、先生たちってどんなこと考えて学校にいるのかな、と先生たちに興味がわきました。

先生たちの本音を聞いてみたい。

先生たちが学校でハッピーでないことが、子どもたちがハッピーでないことにつながっているような気がするんです。

 

今回、中学校の先生をしているazuさんにお話を聞かせてもらうことができました。

学校って先生にとってどんなところなのか、のぞいてみたいと思います。

いつもと違って、ちょっとルポ記事風に書いてみました。

azuさん、ご協力ありがとうございました!

 

インタビュー記事

お話を聞いたazuさん(仮名、50代、女性)は、都内の公立中学校の3年生の担任をしている。

ZOOMでお話を聞かせてもらうことになった。

パソコンの画面に穏やかな笑顔が現れた。

 

先生になったわけ

「今、先生になって7年目、中堅といわれる層でしょうか。ただ、先生になる前に20年警視庁で警察官をしていたので、みんななんとなく普通よりベテラン扱いしてくれます。」

azuさんは、意外な経歴の持ち主だった。

 

「先生になろうと思って辞めたわけではなくて、警察官を20年やって、疲れちゃったんですよね。刑事もやって、内勤もやったけど、泊まり(宿直勤務)もあるし、疲れちゃって。

辞めたときは、大学か大学院に行こうかな、と思っていました。」

 

心理学を学びたいと思い、家から近い大学を探したところ、入学には英語にプラスしてフランス語かドイツ語が必要だった。これからフランス語やドイツ語を学ぶのは辛い。

ほかに心理学が勉強できるところを探して、教育心理学、児童心理学にたどり着いた。

英語が好きで、英語の教員免許が取れた。講師でもやろうかなと思っていたが、それまで教えた経験がないため、講師に応募しても無理なんじゃないかなと。

「まずは、東京都の教員採用試験を受けてみて、もし受かったら、講師をやるにしても少し『箔が付く』じゃないけど、アピールポイントにできるじゃないかと思って。」

そうしたら、教員採用試験に受かった。

「受かったなら…やってみようかなと思って。」

そうやって、公立中学校の先生になった。

教えることにまったく興味がなかったわけではなかった。

「塾でアルバイトしたり、近所の子がうちに来て、勉強を教えてたこともあって。それもあって、教えるのだったらできるかなと。そしたら、こんなことになってました。」

とにこやかに教えてくれた。

 

穏やかで優しい笑顔のazuさんだが、学校ではどんな先生なのだろうか。

学校でしんどいことはないか聞いた。

学校でしんどいこと

「私が一番イライラするのは、事務仕事ですね。

ボリュームが半端ない。アンケートとか。

いじめのアンケートでも、学校内、区、都、国とそれぞれくるんです。重複してる。それが、『不登校について』とか、複数積み重なる。

学力テストについても、全国、都、区とそれぞれやる。

知りたいことって同じのはずなのに、そういうのを一元化するのを誰もやっていないんです。」

学校の先生の事務量が多いというのはメディアでも言われているが、そういう事情があるようだ。

 

「あとは、お役所っぽい忖度って言うんでしょうか。文科省から何か指示があって、現場に降りてくる間になぜか面倒くさくなってる。

例えば、教員の研修。初めて教員になった人の研修を年3回するように文科省から指示が出て、それが自治体に降りてきた段階で、年4回することになってる。がんばっているアピールをしちゃうのか。そういうことがあるんです。」

なるほど。現場の先生たちの負担はどんどん増えていく。

 

学校のシステム以外の部分ではどうなのだろうか。

 

「クラスのボリュームですね。今のクラスは39人です。

中学3年生にもなると体も大きいし、教室ぎっちぎち。39人いれば、39とおりの問題が日々起きます。

トラブル対応があって、保護者に連絡する必要が出てきたり。」

 

学校のトラブル、保護者からのクレーム、先生がたいへんな理由として挙がるものだ。

実情はどうなのだろうか。

 

「最近のことだと、3年生なので、もうすぐ修学旅行があるんです。それで、修学旅行の班編成をするのに、班長をやりたい人を募ったら、希望者が多くて、班長をやれない子が出てきた。

できなかった子が保護者に言って、保護者から『うちの子はどうして班長ができないんだ』って電話がかかってきて。」

中学3年生で、修学旅行の班長になれなかったことで親から電話がかかってくる。なかなか大変そうだ。

 

これは子どもから親へ連絡が行った場合だが、先生の方から親へ連絡するのはどんな場合だろうか。

 

「私の経験では、けんかして相手の子を殴っちゃって、目から血が出たとか。

人の持ち物を壊しちゃった、学校の物を壊した、SNSに友だちの画像を加工したものを流しちゃった。

そんなことが日常茶飯事です。それにともなって、保護者への連絡がある。」

保護者対応

トラブルの電話が学校からあると保護者はどんな対応なのか。

「保護者の人もさまざまです。ほんとさまざま。

どんな人でも、とにかく話を聞きます。傾聴ボランティアの時間ですね。

話をちゃんと聞かないと、保護者の方も消化不良になってしまうので、他のところで再燃するのが分かってるので。

1時間コース、2時間コースもあります。

授業が終わって、掃除が終わって、そこからですから、話を聞き終わるのが5時、6時になって、それから授業以外の仕事をします。私の場合、7時、8時に学校を出ることになります。部活をやっている先生だと、夜9時、10時になっていますね。」

 

生徒のトラブルや保護者からのクレームはやはり精神的にきついのか。

「警察時代、刑事もやっていたので、生徒同士のトラブルはそこまで苦ではないです。

保護者の方についても、話を聞かないと始まらないというのも分かっているので、傾聴するしかないと思っています。

そういう力は、もともと培われていたと思う。」

警察時代からの蓄積が先生としても生きているということのようだ。

 

学校では年間通して行事が多く、行事の事前準備にすごく時間がかかる。運動会、合唱コンクール、移動教室、修学旅行。行事があれば、行事に付随してトラブルが起こる、保護者対応が発生する。

そういう事情も教えてくれた。

怒鳴ること

忙しい先生、生徒を怒鳴りたくなることはないのか。

「怒鳴りたくなるときはあるけど、しないようにしてる。というか、怒鳴ると疲れるし。」

怒鳴るのも疲れるのか。

「向いてないみたいで。前に、女の先輩の先生でわりとガーガー言って学級経営をしていた先生がいて、その先生に『怒鳴らないとなめられちゃうよ』と言われたことがあって。

そうなんだと思ってやってみたら、なんかクラスの空気が悪くなっちゃったんですよね。私には怒鳴るのは向かないんだなって。

子どもたちにできないことがあって、できるようになってほしいと思ったら、怒鳴る以外に方法があるよなって。」

なかなか稀有な怒鳴らない先生だった。

 

「私は昭和の教育を受けてきたから、怒鳴る先生はもちろんいたけど、今の子は大事に育てられてきているから、ガーっと言われると萎縮しちゃう。だから、怒鳴らないでやっていってます。

見ていて思うけど、怒鳴る教育、脅す教育をすると、不登校が増える。」

不登校が増えることが分かっていて、学校として怒鳴るのをやめましょうということにはならないのだろうか。

 

「学年ごとや学校の生活指導主任が『怒鳴らずに、丁寧に叱りましょう』というスタンスをとっている場合もあります。

ただ…ひとり怒鳴る先生がいると、まわりも感化されるんですよね。」

 

「怒鳴る教育はほんとよくない。怒鳴るとそのときは言うこと聴くけど、怒鳴られないと言うこと聞かないという風になってしまう。私は怒鳴る教育、脅す教育はしないです。

ただ、学校全体というと、管理職、校長とか副校長、そこが何も言わないと、怒鳴ることというのは特に問題になることはなくて、普通のことになってます。」

 

校長

学校の中で、校長先生と言うのは大きな存在なのか。

「校長先生はやっぱりリーダーですんで、影響大きいです。

 

勉強している先生、いい考え方を取り入れようとしている先生だと、私たちも学んでいけるところがあるんですけど、

旧態依然としている先生だと、変わって行かないなってイメージですね。

 

前年度が、『どんどん変えていこう』という先生だったんです。

だから、私たちも、考え方をどんどん新しいものに変えていこうとできてたんですけど、

今年の校長先生が、わりと、『今までどおりで』という先生。

トップが変わると、また雰囲気が変わっちゃいます。」

校長先生が新しいことをしていこうとする先生なのか、今までどおりでいいという先生かによって、現場の先生の姿勢も変わるということだそうだ。

「組織はそのリーダー以上にはならない」という言葉を聞いたことがある。

学校はそのリーダーである校長以上にはならないということが現場の話を聞いて分かった。

 

今まで何人くらいの校長先生を知っているのか聞いてみた。

「今まで知っている校長先生は3人。

最初の先生は…どっしりした感じ。

その先生の時に怒鳴る先生とかいっぱいいて、恥ずかしい話だけど、体罰とか部活であったり、懲戒処分を受けた先生もいました。」

最初の校長はどっしりした感じ、というのは、「どっしりと動かない、何もしない」という意味だったようだ。

 

「今の校長先生の年代が50代後半で、その先生時代も昭和な教育を受けてきて、昭和な指導をしてきたので。部活でガンガンやったりとか。なかなか変えられないんじゃないかな」

 

azuさんは少し間をおいて言った。

「もうちょっと、あの世代がいなくなればと思うんですけど。」

 

それから、azuさんの話は教育業界全体の話へ広がっていく。

「私が何となく思うのは、教育業界のシステムがなかなか変わらないので、そうするとやっぱり末端の方も変わらない。

 

警察って、警察庁の国家公務員のキャリアたちが現場で仕事してはサッチョウ(警察庁)に戻って、現場を知ってるんですよね。

ほんとの現場で、それこそ地域の交番で仕事したりとか、刑事部屋でいろいろ苦労して、ドロドロの死体を処理したりとか、たたき上げと同じように現場経験を積んでは、キャリアとしてサッチョウ(警察庁)の仕事もして、というのを繰り返すけど、

文科(文部科学省)のキャリアって、別に現場で学校の先生やったりとか経験がなくて、そこが全然現場の声がシステムに反映されない原因じゃないかと思ってるんです。」

azuさんの言うように、警察庁のキャリア官僚は、警察署での交番勤務や刑事課での捜査官、交通課での交通規制、行政業務を経験する。

対して、文部科学省のキャリアは基本的に現場を経験しない。

 

「今、教員免許も変わりつつあるから、文科のキャリアも、特別免許とかで現場に降りてきて、現場で実際にクラスをもったり、副担任やったりとかして、また省に戻ったりとか、副校長とか校長とかもやったりしたらいいんじゃないかと。やるべきなんじゃないかな」

 

校長は古い、文科省は現場のことを知らない。

azuさんのイライラは、そういう教育システムに向けられたもののようだ。

 

「生徒や保護者については、人ひとり育てるということはいろんなことがあるから、そこはしょうがないと思ってます。

教育行政のシステムをなんとかしてほしい」

 

一保護者としては、怒鳴らないクラス経営をしている稀有な先生が、無駄が多い調査や何もしない校長に愛想をつかして教育現場から去ってしまわないよう切に願いたい。

 

まとめ

以上、azuさんから聞いたお話を書きました。

意外な経歴から、学校でしんどいこと、校長先生の影響力、そういった知らない話を聞かせてもらいました。

また、azuさんが子どもたちや保護者に向ける温かい目線に「ちゃんとこんな先生もいてくれる」ととても心が慰められました。

 

いろんな学校があり、いろんな先生が今も学校で子どもたちと過ごしていると思います。

先生へのインタビュー、今後もやっていきたいと思います。

ではでは。

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